テレビをつけると必ずといっていいほど、どこかのチャンネルで通販番組をやっています。
こうした番組は、いわゆるCMとは違って、芸能人やキャスターが商品を使って見せて、その効果を褒めたたえるので、ついつい見入ってしまう人も多いはず。
そのビジネスは年々拡大しており、’09年に4500億円前後だった市場規模は、現在、6000億円に迫ろうとしています。

消費生活アドバイザーの丸山晴美氏が解説する。
「テレビショッピングの制作者は消費行動を熟知していて、心理学的なアプローチを利用しつつ、巧みに誘導します」

番組には周到な「罠」が仕掛けられており、それにかかると、無駄な買い物をくり返す羽目になるようです。

避けるべきは

テレビの長時間視聴

「ある人や物にくり返し接すると、その人や物に対する好感度が高まる効果があります。心理学の用語でザイオンス効果と呼びます」
(行動経済学の専門家・橋本之克氏)

テレビショッピングというと、甲高い声でまくしたてる業界大手の元社長が有名だったが、あの個性的な声も毎日聞いていると、「この人がお勧めするなら、いい商品だろう」と信頼するようになるから不思議だ。

「寝てもなかなか疲れが取れないあなたに!」
というような「呼びかけ」にも要注意だ

「実際には高齢者で毎日、快眠できているという人はほとんどいない。実は誰にでも当てはまるメッセージを、自分へ向けた言葉と錯覚してしまうと、自分にぴったりの商品だと勘違いしてしまうのです」
(橋本氏)

「ランキング1位」といった広告文句も、疑ってかかる必要がある。

ランキングのようなわかりやすい特徴を強調されると、その商品自体の品質や価格など他の条件を軽視するようになる。これは心理学でハロー効果といわれる。
同様に、「有名人が使用している」といった誘い文句にも注意が必要だ。
冷静に考えれば、有名人が使用しようがしまいが、商品の特質には関係がない。

夜に買ってはいけない

夜間に番組を見るのは避けよう。
「夜は昼に比べて、判断能力が鈍ります。お酒でも飲んでいれば、一層、無駄な買い物をしやすくなってしまう」
(丸山氏)

「限定商品」「残りわずか」といった文句も「罠」だと心得たい。

今買わないことが損になるという損失回避の感情が働いて、必要ないものを買ってしまうのです」
(橋本氏)
冷静に考えれば、毎日「限定商品」が売られているのはおかしな話だ。

騙されないために待って判断

「30分以内にお電話ください」と時間を区切る手法にも気をつけなければならない。
例えば、番組で素晴らしい切れ味のナイフを見ると、脳内にドーパミンが分泌され、欲しいという欲求が高まる。
少なくとも2~3時間、できれば一晩待ってドーパミンが消えてから、本当にそれが欲しいか判断するべきだ。
なによりテレビ通販の商品は決して安くないことを肝に銘じるべきだ。
司会者は「特別にさらなるお値引き」とまくしたてるが、実際にはインターネットなら同じ商品がもっと安く手に入ることがほとんど。

「安いから買う」という発想

サプリメントなどの紹介で多用される、「一日あたりたった100円」という値段の見せ方も騙されやすい。
フレーミング効果といって、同じ値段でも月に3000円と言われるよりも、安く感じてしまう。
そもそも「安いから買う」という発想だと、無駄遣いはやめられない。
「安く買えた」満足感に対してカネを払っているようなものだ。

オマケにつられる

「電子レンジを買うと、耐熱皿もついてくる」という商法だが、本来欲しかったのはレンジであって、耐熱皿ではない。
皿をオマケでつけるために、レンジの価格も高く設定されているはずである。
「番組に騙されないためには、まず人間は不合理な選択や判断をしてしまう生き物であるということを認めることが大切です」
(橋本氏)

少しテレビを消して、冷静になろう。そうすれば「金運」が舞い戻ってくるはずだ。